第八夜

夜は液体          

初めはさんずいへんに夜で液という漢字になるのが不思議だなと思ったのです。

そのうちだんだん液には夜が溶け込んでいるような気がしてきて。

お酒が好きなこともあるのか、

お酒を飲むのは大半は夜だったりもするので、

だんだん夜は液体なんだと思うようになってきました。

冷静になれば確かに夜は物質ではないので、

気体ではないし、個体でもない。

でも夜は液体ではない、

とは言い切れないのではなかろうか。

特に深夜になるほど、頭も体もどろどろに液状化してしまうのは私だけでしょうか。

琥珀色の夜もあれば、赤や白の夜もあったり、

スパークリングな夜もあったり。

それって単なる酔っ払いの戯言ではないかと言われれば、その通りであります。

そんな戯言はどうでもいいのだけど、いやそんな戯言こそが

大切なのだとも一方では思っていたりしながら、

目の前の一片のショコラを口に入れるのです。

そのショコラは初めは小さな個体なのだけれど

そのうち口の中で個体からゆっくりと液体に変わってゆく。

昼が夜に変わるようにゆっくりと、あっという間に。