第七夜

ほろ苦いバレンタインデイズ

バレンタインデーの想い出について何か書こうと思ったけど

それって野暮なことだなと思ってやめようかな、と思った。

特にこの手の想い出は引き出しの一番奥にそっと置いておくのがいい。

誰にも言わなくていい。老後に自分だけの楽しみとしてとっておくぐらいがいい。

コラムに書くことなんかない。と思ったけど

引き出しを開けてしまったので少しだけ書いてみることにした。

義理チョコとか、友チョコとかという言葉を誰もが口にすることのなかった頃のお話。

今はバレンタインデーといと言えばお祭りのようになっているけど、昔は随分違った。

ちょうど高校生で思春期のど真ん中だった。

その頃はバレンタインデーとは、女の子が男の子に告白することを許された1年に1回だけの特別な日。

それは思春期の高校生にとって1年で一番大切な日で奇跡のような日だ。

バレンタインデーがキリスト教の祝日だとか、チョコレートを渡すのは日本だけの習慣だなんて知らなかったし、

そんなことはどうでもよかった。

好きな女の子からチョコレートをもらえるかもらえないか。

高校生の男の子にとって、それは天国か、地獄。大げさではなく。

今では思春期をはるか昔に通り過ぎ、毎年やってくるバレンタインデーにいつの間にか

慣れっこになってしまったけど。

高校生には高校生の、大人には大人のバレンタインがある。

DAIGOのショコラは思春期向けではなくもちろん後者。

でも大人になっても高校生の頃の記憶はいまだに色あせない。

もらえなかったバレンタインデーの記憶は淡くてほろ苦い。

もらえなかったほろ苦い想い出を持つ男の子は少なくないと思うし、

渡せなかったせつない想い出を持つ女の子も同じくらいいると思いたい。

今年はあの頃を想い出しながら、

大人のバレンタインデーを楽しみますか。